1. 今回のMOCで何が決まったか
厚生労働省の公表文では、今回の覚書は育成就労外国人の送出しや受入れに関する二国間の約束を定め、両国が協力して育成就労外国人の保護と制度の適正運用を図ることを目的とすると説明されています。
日本側の約束
- 監理支援機関の許可、育成就労計画の認定事務を基準に沿って適切に行う
- 許可取消や認定取消等を行った場合はタイ側へ通知する
- タイ側から不適切な育成就労実施者の通報があれば調査し、結果を報告する
タイ側の約束
- 覚書の基準に基づき、送出機関の認定事務を適切に行う
- 送出機関の認定取消等を行った場合は日本側へ通知する
- 日本側から不適切な送出機関の通報があれば調査し、結果を報告する
さらに、公表文にはこの覚書は署名した日から発効するとあります。公表日ベースで「検討中」ではなく、二国間文書として既に効力が生じている点は重要です。
2. 受入企業にとっての意味
まず押さえたいのは、今回のMOCだけで採用開始条件や個別認定基準が全部確定するわけではないということです。監理支援機関の許可、育成就労計画の認定、分野別運用方針、施行日前申請、送出機関との契約実務は、別途一次情報を見て進める必要があります。
そのうえで、この公表は、育成就労制度が国別の送出し実務まで含めて具体化し始めていることを示します。特にタイルートを検討している企業や、将来的に技能実習からの切替えを見据えている企業にとっては、委託先との役割分担や採用計画の前提を早めに揃える材料になります。
なお、タイとの覚書は「初」の事例です。したがって、他国でも同様の受入れ準備が整っているとは現時点で断定できません。送出し国ごとの整備状況は個別確認が必要です。
3. 今やることチェックリスト
A. 採用計画の前提を揃える
- 対象国にタイが含まれるかを確認する
- 育成就労を前提にした採用時期と入社時期の見通しを整理する
- 制度説明資料に「MOC公表日」を明記し、断定表現を避ける
B. 委託先との役割分担を確認する
- 送出機関確認を誰が担うかを決める
- 監理支援機関、行政書士、人材紹介会社の分担を整理する
- 更新情報を誰が月次確認するかを決める
C. 社内共有資料を更新する
- 技能実習からの置換え前提だけで話さず、育成就労の現在地を明記する
- 国別の準備状況は一律で扱わず、個別確認が必要と書く
- 送出機関選定と契約前確認の観点を追記する
D. 追加確認が必要な論点
- 分野別の受入可否、上乗せ基準、審査資料
- 他国との二国間文書の整備状況
- 送出機関との実務フロー、費用、個人情報共有範囲
実務メモ
今回のMOCは、企業の個別案件を自動承認する資料ではありません。「タイルートの制度準備が前進した」という認識で、採用計画・委託先管理・社内説明文の見直しに使うのが安全です。
社内共有用PDF
育成就労 タイMOC確認チェックリスト 2026
公表日、覚書の要点、社内確認項目、委託先への確認事項を4ページに整理しました。タイルートの検討メモとしてそのまま回覧できます。
対象:受入企業の人事・総務/海外採用担当/委託先管理担当|更新日:2026.06.06|全4ページ
4. よくある質問
Q. 今回のMOCで、タイからの採用はすぐ始められますか?
A. MOC公表自体は重要ですが、個別案件で必要になる手続、送出機関の確認、分野別要件、施行日前申請の実務は別資料で確認が必要です。採用開始可否をこの公表だけで断定しないほうが安全です。
Q. 他国の送出し状況も同じと考えてよいですか?
A. よいとは言えません。今回の一次情報はタイ王国との初のMOCに関する公表です。他国の状況は国別に個別確認が必要です。
Q. 受入企業が先に見直すべき社内文書は何ですか?
A. 採用計画、委託先管理表、社内説明資料、役割分担表です。「制度準備が前進したが、個別条件は要確認」という書き方に更新しておくと運用しやすくなります。
5. 参照した公式一次情報
- ・厚生労働省 タイ王国との育成就労制度に関する協力覚書(MOC)に合意しました: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72889.html
- ・出入国在留管理庁 育成就労制度: https://www.moj.go.jp/isa/applications/index_00005.html
- ・出入国在留管理庁 育成就労制度に係る施行日前申請: https://www.moj.go.jp/isa/03_00174.html
本記事は2026年6月6日時点で確認できた公式一次情報をもとに作成しています。運用の詳細や国別の実務は更新される可能性があるため、最終判断は必ず最新版で個別確認してください。
育成就労の準備をどこから始めるか迷う企業様へ
丸忠物産では、特定技能の紹介実務だけでなく、育成就労を見据えた社内整理、委託先の役割分担、制度変更時の説明文整理まで支援しています。国別ルートや分野別要件は個別確認が必要なため、採用計画に合わせて論点を切り分けます。